ISMSのA5.1「情報セキュリティのための方針群」とは
ISMSのA5.1「情報セキュリティのための方針群」とは
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を構築・運用する上で、情報セキュリティの基本方針(ポリシー)は最も重要な基盤のひとつです。
ISO/IEC 27001:2022(JIS Q 27001:2023)の5.1「情報セキュリティのための方針群」では、組織が情報セキュリティに関する方向性と目的を明確にし、それを組織全体に伝達し、関係者に周知することを求めています。
1. 「情報セキュリティの方針群」とは何か
「方針群」とは、単一の方針だけでなく、情報セキュリティに関する複数のレベルの方針を体系的に整備したものを指します。
具体的には、以下のように階層的に構成されることが一般的です。
| 階層 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 基本方針(トップレベルポリシー) | 経営層が定める情報セキュリティに関する基本的な考え方・方針 | 組織全体の方向性を明示 |
| 分野別方針 | 物理セキュリティ、アクセス管理、暗号利用、外部委託管理などの分野ごとの方針 | リスク対策の方針を具体化 |
| 手順書・ルール | 実務担当者が遵守すべき具体的手順(例:パスワード管理規程、入退室管理手順) | 実行レベルでの遵守 |
つまり、5.1で求められているのは、単に「方針文書を1つ作ること」ではなく、情報セキュリティ管理の枠組み全体を支えるポリシー体系を構築することなのです。
2. 方針群の主な要求事項(JIS Q 27001:2023 5.1)
規格が求めているのは、以下の5点です。
- 情報セキュリティの目的および経営の方向性を明確にする
→ トップマネジメントが主体となり、組織の戦略や目的と整合した方針を策定する。 - 情報セキュリティの目的の確立を支援する
→ 方針が、組織が設定するセキュリティ目標の基盤となるようにする。 - 組織の状況及び利害関係者の要求事項に適合させる
→ 法規制、契約、顧客要求などを考慮した内容にする。 - 文書化して利用可能な状態にする
→ 方針は文書化し、必要な人がいつでも参照できるようにする。 - 組織内外に伝達する
→ 社員への教育・掲示、外部への公開(例:ホームページ掲載)など、適切に周知する。
3. 情報セキュリティ基本方針の内容例
組織ごとに異なりますが、一般的な基本方針には以下のような内容が含まれます。
- 情報セキュリティの目的・理念
- 適用範囲(対象とする情報資産・部門など)
- 経営層の責任とコミットメント
- 法令・契約遵守の方針
- 教育・訓練の実施方針
- インシデント対応の基本的考え方
- 継続的改善への取り組み
この方針は、経営者の署名・制定日を明記し、社内外に公表するのが望ましいとされています。
4. 方針群の運用と見直し
方針は「作って終わり」ではなく、ISMSの運用とともに継続的に見直すことが求められます。
例えば以下のような場合に改訂が必要です。
- 法令や業界基準の変更
- 新たなリスクの発生(クラウド利用、テレワーク導入など)
- 組織構造や事業内容の変更
- 内部監査やマネジメントレビューの指摘事項
見直しを通じて、方針群を常に最新の状況に合わせることが、ISMSの有効性維持に不可欠です。
5. 方針群と他の要求事項との関係
5.1の方針群は、ISMSの他の要素と密接に関係しています。
- 5.2 経営陣の責任:方針の承認と維持は経営陣の責務
- 6.2 情報セキュリティ目的:方針に基づき、具体的な目標を設定
- 7.3 認識・教育:方針の理解を従業員に浸透させる教育が必要
- 9.3 マネジメントレビュー:方針の妥当性・有効性を定期的に評価
このように、方針群はISMS全体の“骨格”であり、全ての活動の指針となります。
まとめ
ISMSの5.1「情報セキュリティのための方針群」は、
組織の情報セキュリティ対策を体系的・継続的に進めるための最上位のルールと指針です。
経営層が明確な意思を示し、全社員がその方針を理解・実践することで、
組織全体のセキュリティ意識が統一され、信頼性の高い情報管理体制が実現します。
