ISMS A.5.2「情報セキュリティの役割及び責任」とは
ISMS A.5.2「情報セキュリティの役割及び責任」とは
ISMS(JIS Q 27001:2023/ISO/IEC 27001:2022)の附属書A.5.2「情報セキュリティの役割及び責任」は、
組織が情報セキュリティに関する役割・責任・権限を明確にし、割り当て、周知することを求めています。
これは、情報セキュリティに関する業務を誰が、どの範囲で、どのように実施・監督するのかを明確にして、
責任の所在を不明確にしないようにすることが目的です。
1. A.5.2の要求事項の概要
附属書A.5.2では、次のように定められています(要約):
組織は、情報セキュリティに関する役割及び責任を定め、それらを文書化し、関係者に伝達しなければならない。
この要求事項は、
「誰が何を責任をもって行うのかを明確にし、関係者がそれを理解していること」を確認できるようにするものです。
2. なぜ役割と責任の明確化が必要なのか
情報セキュリティの管理は、特定の担当者だけで完結するものではなく、
経営層から一般社員、システム管理者、委託先まで、多くの人が関与します。
そのため、役割や責任が曖昧だと、以下のようなリスクが生じます。
- セキュリティインシデント発生時に、誰が対応すべきか分からない
- アクセス権の管理や監査対応が漏れる
- 情報漏えい時の報告や対応が遅れる
- 経営層が情報セキュリティの重要性を把握していない
これらを防ぐために、組織全体で役割と責任を明文化し、明確に伝えることが求められています。
3. 主な役割と責任の例
組織によって構成は異なりますが、一般的なISMS体制では以下のような役割が設定されます。
| 役割 | 主な責任・職務内容 |
|---|---|
| トップマネジメント(経営層) | 情報セキュリティ方針の承認/リソースの提供/最終的な責任を負う |
| 情報セキュリティ管理責任者(ISMS責任者) | ISMS全体の運用・監視・改善を統括/リスク対応の承認・調整 |
| 情報セキュリティ委員会 | 方針・計画の審議/リスク評価結果の確認/インシデント報告の共有 |
| 情報資産管理者(部門責任者) | 所管する情報資産の保護・利用状況の監督/部下の教育 |
| システム管理者 | ネットワーク、サーバ、アクセス権限の技術的管理 |
| 全従業員 | 方針・手順に基づいた日常業務の実践/情報セキュリティ教育の受講/インシデントの報告 |
| 委託先・外部業者 | 契約・NDA(秘密保持契約)に基づく情報の適切な取扱い |
これらの役割は、組織図、職務分掌表、またはISMSマニュアル等に明示し、全員が理解できるようにしておく必要があります。
4. 実務的な整備ポイント
A.5.2を満たすためには、次のような手順で整備・運用すると効果的です。
- 情報セキュリティ組織体制を明確にする
→ ISMS推進責任者、管理者、委員会などの構成を定義し、職務を文書化。 - 職務分掌表・責任一覧を作成する
→ 誰がどの情報資産を管理しているのか、権限の範囲を明示。 - 教育・周知を行う
→ 新任者教育や定期研修で、役割と責任を全従業員に周知。 - 変更管理を行う
→ 組織改編、人事異動、システム変更などがあった場合は、責任範囲を再確認・更新。 - 監査・レビューで有効性を確認する
→ 内部監査やマネジメントレビューで、役割が適切に果たされているかを確認。
5. 関連する他の管理策との関係
A.5.2は、以下の他の管理策とも密接に関係しています。
| 関連項目 | 内容 |
|---|---|
| A.5.3 職務の分離 | 一人に過度な権限が集中しないよう分離を行う(牽制機能) |
| A.5.4 利害の対立の管理 | 情報セキュリティ判断が特定の利害に偏らないよう管理 |
| A.5.1 情報セキュリティの方針群 | 役割・責任は方針で方向性を示し、A.5.2で具体化する |
| A.6.1 組織における責任及び権限 | ISMS全体での役割分担(ISO 27001本文 5.3項)と連動 |
このように、A.5.2はISMS運営の根幹である「責任体制」を支える重要な要素です。
6. まとめ
A.5.2「情報セキュリティの役割及び責任」は、
情報セキュリティマネジメントを“人と組織”の面から支える基本要件です。
- 役割と責任を文書化し、関係者に周知する
- 組織の変化に応じて更新する
- 教育・監査を通じて定着させる
これらを確実に行うことで、情報セキュリティの管理が「属人的」ではなく「組織的」に機能し、
インシデント発生時にも迅速で的確な対応が可能になります。
